2009-12-21

[Book] 46年目の光

トイレ文庫で「46年目の光」を読んでいる.

ちょうど半分くらい来たところ.
タイトル通り,幼い頃に事故によって目が見えなくなった人が
手術によって目が見えるようになるお話なのだが,
前半部分は,主人公がいかにして手術をすることを決断するようになったか
ということが半生を交えながら詳しく述べられている.

こういう部分は,認知科学的な機能への興味しかない人にとっては
退屈かもしれないが,もし自分ならどういう生き方をしただろうか,
ということを考えると,一般的な話としてもとても面白い.

例えば,主人公の友人は30代で視力を失ったが,
「ものごとを正しく理解する能力さえあれば,なんとかなる」
と,希望を失わずにやっていくことを決意する.
この言葉は,最悪の状況に陥った,どの人に対しても
勇気を与えてくれる言葉だろう.


目が見えるようになった人の記録では,
ほとんどの人が,その後「見えないままの方がよかった」と
不幸に感じている人も多いそうである.
そういう記録を読んで,手術を踏みとどまる人も多いという.

また,現在の技術では,手術の失敗によってわずかな光さえも
感じる能力を失う危険があったり,移植の拒絶反応を抑える薬による
発がん性の危険があったりと,様々なデメリットも有り,
光をとりもどすという話は早々単純な話ではないことも
詳しく述べられている.

前半部分には主人公の人生に対する態度が述べられているが,
様々な現在のメリットを失ってさえも,新しいことにチャレンジする
という個人の哲学があるからこそ,手術を決意できたのだということがわかる.

本来,認知機能というものは,新しいものごとを「知りたい」とか
そういったものと不可分であるはずで,単なる認知機能の再生にとどまらず,
その裏にある部分まで知ることができるという点で,この本は面白い.

明日から,いよいよ目が見えるようになる後半開始.

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