2010-10-29

[Life] 他者の目

今日の授業は学部学生が相手で,学生さんが前回授業で学んだことについて
グループごとに発表を行うというものであった.

まぁ,やはり発表というものに慣れていないので,
用意してきた紙を下を見ながら読むだけだったり,
ほぼ原稿そのものだけでスライドを作っていたりとほほえましい.

聴衆の方を向いて発表をしなさい,
要点だけをスライドにまとめなさい,
などとありきたりの注意をしたり顔でする.

アメリカの映画では,小学校のうちから
昨日あったことを皆の前で話す,など早いうちから
発表のスタイルを体験させているのを目にするけど,
日本ではそんな授業はほとんどないから,
こういうのが初めてということで,
どうしてもぎこちなくなってしまいます.

今日の授業でも,だめなところを指摘するよりも,
よかったところを褒める方に重点をおいて,
発表はおもしろい,という印象を持てるようにして
あげれよかったかなと,ちと反省.


藤井直敬氏は「つながる脳」の中で,社会性を研究テーマに選んだ理由の一つを

僕自身が常々他者の視線が気になって仕方が無くて困ってたからです.
どこにいても何をしていても,他者が近くに来るだけで,自分の振る舞いが勝手に変わってしまい,自分がそれまでの自分で無くなってしまうのです.
僕は昔から,そんな自分が嫌で仕方が無かったのですが,もしその他者と自分との関係が自分の脳内に及ぼす影響とその仕組みを理解できるなら,僕の生活は精神的に相当楽になるのではないかと思ったのです.たとえば,そのような社会的な反応が実は誰にでも起きていることで,しかも脳内の当然の仕組みとして避けられないのだと分かれば,自分一人で悩む必要がなくなるわけです.

のように語っていますが,たしかに他者の目というのは怖いですよね.

でも,前回参加したワークショップでは,藤井氏は堂々と反論を述べ,
強い主張をされておられました.なので,ひさびさに「つながる脳」を開けて,
この一節を見つけたときは意外に思いました.もう藤井氏の中には
他者と自分との関係が自分の脳内に及ぼす影響とその仕組みについて
おぼろげながら青写真ができているのかもしれません.
うーん,爪のあかを煎じて飲ませてもらわないとな.

まぁ,今日発表した学生さんも,数年後にはいろんな経験を積んで,
すぐにプレゼンがうまくなるんでしょう.

さて,こんな商品があるそうですよ.

これはドライアイにならないように,画面の目の瞬きにつられて瞬きを促す装置らしいのですが,
いつも使うことで,他人からの視線をものともせずに振る舞えるようになるかもしれません?.

2010-10-28

[Research] メガネを外すと別の顔

gigazine に
離れて見ると表情が変わる不思議な写真「ハイブリッドイメージ」
なる記事がありました.

以下のような写真なのですが,離れてみるとマリリンモンロー,近くで見るとアインシュタインとなんとも不思議です.



私なんかは近視なのでメガネを外すとマリリンモンローが見えます.
ハイブリッドイメージというのだそうですよ.


そもそも粗い画像でも,その人であるということが分かるというのもおもしろいですよね.
人の顔のコードは,粗いものと細かいものの2系統あるということなのかな?

CSI でやっているような,粗い防犯カメラの画像から鮮明な犯人の顔があらわれるというフィルターというのも怪しくなるのでしょうか.
実際には,メガネを外していても,だいたい人物が誰かわかり,その予測が外れるということはほとんどないです.
人間は粗い <-> 細かいの変換マップのようなものをもっていると考えることもできますよね.
Slow Feature Analysis のようなものをかければ,その間の処理のつながりが得られるかもしれない.

などなど,いろいろと考えさせられる新手の錯視でした.

2010-10-27

[News] ドラえもんの手

Wired より
何でもつかめて操作できる、新発想のロボット


指は無いのに、どのような形でもつかむことができるうえ、水を注ぐ、ペンで書
くなどの動作もできるロボットが発表された。粉体のジャミング転移を利用する
という全く新しい発想で作られている。





おぉ,ドラえもんの手のようだよ!
5指ハンドの皮膚の部分に使っても,ものを安定して持つのによさそうだ.

この「ジャミング転移」現象で,運動を作ることもできればすばらしいんだけどな.

2010-10-26

[Research] 脳の説明とは?

ひさびさの投稿.

先週,岡崎の生理研で行われた
生理研研究会2010 認知神経科学の先端 「身体性の脳内メカニズム」
というワークショップに行ってきました.

平田先生の類人猿の自己認識に関する研究の発表など,おもしろい発表があったのですが,
そのあたりの紹介は要旨にゆずるとして,強烈な議論がありましたので,そこだけ報告.

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OIST の磯田先生による,
自分の行動決定に関連する他者の行動を観察したときに特異的に反応するニューロン
がサルの前頭葉の内側部に発見されたという研究発表があったのですが,
その質疑応答で,東大の池上先生が
「そんなの全然重要な問題を解決していないよ!」
と強い調子で文句をつけはじめました.そのあと,池上先生が何を言っているのか
ついていけなくなってしまったのですが,國吉先生が
「池上さんはどうしたら自己・他者のシステムを作れるのかという
 構築主義的立場からものを言っているということを理解してほしい、」
と,うまく池上先生の立場を説明されていました.
(このとき,周囲の雰囲気に流されずに,自身が違うと思ったことを主張できる自信,
 そして,それを分かりやすく伝えることができる言語能力の高さという点で,
 どちらの先生も東大の教授というのは,さすがだなぁ,とたいそう感心をいたしました.
 ショボーン.)

また池上先生のコメントに対して,別の神経生理分野の先生が「さっぱりわからん」といって
切って捨てようとされたのですが,その態度に,理研の藤井先生が
「そんな態度は恥ずかしいではないか!」
とお説教をされていたのが印象的でした.

このあたりの議論は
<吉田先生のブログ>
http://pooneil.sakura.ne.jp/archives/2010/10.php
<藤井直敬氏のブログ>
http://www.brainhackers.org/archives/2010/10/4103
に詳細に説明されていますので,ご一読を.雰囲気が分かると思いますよ.

これだけ二つの立場があからさまに対立するところを目にできたのは,
問題へのアプローチの違いをより意識的にさせてくれるし,
やっぱりそれだけじゃだめなんだ,でも自分としてどういうことを提供できるんだろうか,
自分が満足できる説明とは?と襟を正させてくれるよい機会でした.

國吉先生の発表が最後に予定されていて,周囲の方々が赤ちゃんシミュレータについてどのようなコメントをするのか
興味があったのですが,残念ながら奈良で別のセミナーがあったために発表を聞かずに岡崎を後にしました.
(奈良のセミナーはそれはそれで面白かったので,また別の機会に紹介)


neural correlate (ぶっちゃけると,意識と相関するニューロン活動が脳で見つかれば
いいじゃないかという立場?)の立場からは,メカニズムというのはなかなか分からんよなぁ
と思っていたのですが,神経生理の中であからさまに批判する人がいるというのはすごいもんだ,と思いました.
(まぁ,neural correlate だって,意識みないなふにゃふにゃしたものを科学になんとかのせましょう,
まずはここから,ということで,そういうアプローチをとったんだろうけどね)

構築主義のアプローチをとっているもののハシクレとしては,
神経生理の neural correlate 的な多くの研究に対して,どういった観点から
「説明」するモデルを提供できるかということをよく考えていかなければならない,
ということを強く意識させてくれるワークショップでした.
(と無理矢理まとめておきます)

2010-10-07

[Book] 適当日記

夜,嫁さまが先に寝床に入ってからが自分の時間である.
洗い物を終わって,風呂に入って,
日本酒をおちょこに一杯ついで,静かな時間を楽しむ.

英語の本も読んでみるけど,すぐに頭が疲れてくる.
そんなときに,高田純次の「適当日記」を開きます.



この本は iTunes ストアで上位にランクインしているのを発見し,
¥115円ということで安いので購入したのですが,
たらたら読むのにちょうどよい.

この本がおもろいのは,「適当さ」というのが世間の理屈から外れているからなんだろうにゃ.
ふだんの社会の論理の窮屈さから少し自由になるところがクスリとおもしろいのか.

このブログも,適当日記とノリだけは変わらんなぁ.と思いつつ,酒に酔ってほろ酔い気分になり,ぐ〜,と寝る.

[Research] 研究費

先日モギー先生が来られて昼食をご一緒させていただいた.
そのときに,

「そうですかー.科研費の申請の時期なんですか.
 俺は科研費なんか申請したこと無いからなぁ.
 出してみるかな.
 でも番号とかさっぱりわからんな.
 学振でもらって以来だからなぁ.」

とおっしゃっていた.
研究費はソニーから出ているのかな?

「まぁ,ロボット系と違って安くすみますからね.」

ということだけれども,なんとも羨ましい話である.

[グルメ] たこやん

昨夜は仕事の遅い嫁様が「駅まで迎えにこんかい」というので,
もよりの淡路駅まで迎えに行ってきました.

なんで,そこまでせにゃならんのだ,と思いつつ,ついでに
駅近くの「たこやん」というたこ焼き屋で待つことにします.

このお店,イケメンのにーちゃんが一人でやっています.
いつも同じ人がやっているというのは,なかなか安心感がありますよね.

夜はお客さんで大にぎわいなんですが,客層もばらばらです.
サラリーマン風の人が
「このたこ焼き,中になんか入ってんのちゃうか?
 帰りに店の前を通ったら,いつもふらふら〜っと入ってまうねん.」
と言っています.
その隣には,OL っぽい人と身なりのいい年配の人がいます.どういう関係なんかな?
この前は,片腕のおじいちゃんが戦争体験のようなことを話していました.

店の中はいっぱいなので,店の外でビール片手にポン酢たこ焼きをほおばります.幸せ幸せ.
こんな風にたこ焼き屋やるのも,えーなー.

2010-10-04

[Life] 自分に向いていない?

昨日ある番組で,大竹まことが話してた話.
あるとき上岡龍太郎が独り舞台で「火垂るの墓」を見ていたく感動し,
自分でもやってみようと思って脚本を取り寄せた.
しかし,最初の3行を読んだだけで,どうしても涙が溢れ出てしまい,
とても独り語りの舞台にならない.そのときは
「上岡龍太郎のようなクールな人間だからこそ,あの舞台ができるんだ.俺には無理.」
と思い,それっきりあきらめてしまった.

ところが,かなり年月が経ってから,同じ舞台を山田雅人がやっているというのを知り,
ある機会に本人に「よくできるなぁ」と自分の体験を話した.
すると,山田雅人は
「僕も涙は出ましたよ.でも涙が枯れはてるまで練習をしました.」
それで,大竹まことは気づいた.あぁ,自分の人生で自分が足りなかったのはそこなのか.少し試して,自分で見切りをつけてしまって,やれそうなことだけを俺はやってきた.自分でとことんまでやるという努力をしてこなかった,と.

ちょっといい話だった.



とことんまで努力するというのは,あんまりやっとらんなぁ.
できそうにないことには,「向いてないし好きじゃない」という理由を付けて避けがちだからなぁ.

反省反省.

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