2009-06-17

[News] 隔離された鳥の歌

wired で以下の研究を知る.

文化は DNA に組み込まれている?「隔離された鳥の歌」実験

 複雑な求愛の歌で有名なキンカチョウは、通常はその歌を父親から習い、群れから隔離されると妙な歌を歌うようになる。隔離された集団は自分たちの新しい歌を教育していくが、その結果はどうなるだろうか。


他者の声を真似をする能力とメスの好みによる選択があれば,ある程度の収束は可能ということか.

この話を聞いてすぐに思い浮かぶのは「ニカラグア手話」の話.
これはニカラグアで聴覚障害児の特別教育施設が設けられ,数百人の子どもたちが集められた.そこで自然発生した手話のことです.以下,イアコボーニの本からの引用.

「校庭やバスの中や道ばたで互いに顔を合わせているうちに,子どもたちは次第にそれぞれの慣れ親しんだ身振りを組み合わせながら共通のサイン言語を発達させていった.最初はそれも比較的単純な言語で,文法も単純,類義語はほとんどない,いわゆるピジン語のようなものであった.やがて,年長の子どもたちにこの単純な言語を教えてもらった年少の子どもたちが,もっと精密で,明確で,ゆらぎのない,成熟したサイン言語を発達させた.これが現在「ニカラグア手話」と呼ばれているものである.皮肉なことに,学校の教職員は子どもたちが互いにどんなサインを出し合っているのか理解できず,外部の助けに頼らなくてはならなかった.アメリカ手話の専門家であるアメリカ人言語学者ジュディ・ケーグルが招かれて,初めてここで何が進行しているか分かったのである.」(「ミラーニューロンの発見」(マルコ・イアコボーニ著 塩原通緒訳)


イアコボーニは,これは言語の遺伝子というよりは,「ミラーニューロンの機能の促進する相互模倣」が可能にした現象であると言ってますが,まさにそうなのでしょう.
たしかキンカチョウにおいても,他者の歌を聴いているときに,自身が歌っているときの神経回路が確認されているとか.

#やっぱり「文化」というのは,ちょっと言い過ぎなんちゃうかなぁー

2009-06-16

[Life] 夜外から聞こえてくる音

そろそろ暑くなってきてので,風を通すために夜も窓を開ける.
住んでいるところが住宅密集地なので様々な音が聞こえてくる.

何か誰かが怒ったような大きな声で叫んでいる.
けんかか?と思ったら,嫁が

「どうも説得口調みたいやで」

という.確かによくきいてみると,

「かっこの中にいれるー」
「だから〜,かっこに入れるっていうてるやろー」

どうも塾のようだ.
そういえば,声のする方向に普通の家で小さな学習塾の看板があったのを思い出した.もう遅いのに頑張っているなぁ.ずいぶん熱心な先生だ.

「いいかー,まずは1教科に興味を持って勉強するんや.
 それで成績が伸びたら,勉強に自信がついてくるんや.」

いい先生だなぁ.それを聞いて,嫁曰く,

「そんなふうには,うまくいかんのだなー.
 1教科に集中しても,あかんもんはあかんかったで.」

なにをもともないことを言っているのか..ひどいのぅ.


そうかと思うと,女の人の金切り声が聞こえてくる.

「そりゃあ,あんたはえらいよ!立派やわ!
 でも私の気持ちにもなってみ!」

夫婦喧嘩だろうか?相手の声は全く聞こえない.恐ろしいことだ.
それを嫁が窓辺で興味津々でじっと耳をこらして聴いている.

「そんなに窓に近づいたら,向こうから影が見えるで...」
「うるさいなーもう」


そんな声に呼応するように,近所の犬やら猫やらが遠吠えをしている.

「にゃ〜〜,にゃあ〜〜」
「ワオーン,ワオーン」


遠くでは,わらび餅の車が

「わらび〜もちー.冷たい冷たいわらび餅.
 美味しい美味しいわらび餅はいりませんかー」

その声に誘い出されるように
思わず外に出て行って,わらび餅の車を追いかけた.

2009-06-05

[News] ヒト言語遺伝子をマウスに

Nature の Research Highlights に面白い記事がありました.

Nature 459, 619 (4 June 2009)
Neurobiology: Squeaking in tongues

Mice carrying a humanized version of a gene considered key to the human capacity for speech show subtle changes in their brains and in the way they vocalize.

Wolfgang Enard of the Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology in Leipzig, Germany, and his colleagues substituted two amino acids in the mouse Foxp2 protein to generate the humanized version. The animals remained generally healthy, but calls made by isolated pups had a different structure from those of normal mouse pups.

The authors also found structural, neurochemical and neurophysiological changes to neurons in a brain circuit associated with speech in humans. They say it could represent the first investigation, in an animal model, of amino-acid substitutions that might be relevant to human evolution.


もとは Cell ですね.

A Humanized Version of Foxp2 Affects Cortico-Basal Ganglia Circuits in Mice
W. Enard et a. Cell 137, 961–971 (2009)
(共著者の数がすごいですね...)


言語がなぜ人間だけで可能なのか,ということは大問題なのですが,
遺伝子的には Foxp2 という遺伝子が,言語の創発に重要な役割を
果たしているのではないか,と注目されています.

で,この研究は,そのヒトのFoxP2遺伝子をマウスの遺伝子に組み込んで,マウスがどうなるか
を見てみたというのです.ある意味,マッドですねぇ.

なんでもデンドライトがふつうのものよりも伸びたり,
声が変わったり!と,脳にも行動にも変化が出たとか.

マウスでそれくらい変化がでるなら,次はサルやチンパンジーで,ということを考える人も
いるのでしょうが,それはなかなか倫理的に難しいのでしょうね.

いやはやとんでもないことをする人もいるもんです.

研究代表者はマックスプランク研究所の Wolfgang Enard という人だそうで,
その人による解説ムービーもありますが,自信満々で説明がうまいですねぇ.

2009-06-04

[Life] わて,ほんまに,よぅ言わんわ!

論文書きとはホントにいやですねぇ.
集中力がない私には本当に苦痛です.
そんなときほど,変なことが気になってしまって...

なんだか急に,昔にみたCMで

「ちょっと,おっさんこれなんぼ〜♪」

というフレーズが気になってきました.
大阪弁をそのままに曲を作るとは,なかなかおもろいなぁ,と.

調べてみると..これって原曲があったんですねぇ.
「買い物ヴギ」


すごい.声がほんとにいい!
声の表情もいい!
そして,繰り返される大阪弁の歌詞!

「わて,ほんまに,よぅ言わんわ!」

なんとも,すごい歌ですよ.

2009-06-03

[News] 巨大ハンド

この発想はなかった..
やはり,ロボットというのは,持てる力以上の力を出せるようになる,
というのが醍醐味なんだろうなぁ.

ロボメカなんかでも行って思うのは,
ロボット研究者は自分のロボットへの思い入れが大きいので,研究というよりは
作ることで自己実現というアーティストの要素が多分にあるということだ.

ロボットは「作品」なのだな.

高さ8m、操縦者の手を模倣して動くロボットアーム

「操縦者」はグローブ式コントローラーを装着。コントローラー内での動きが、
巨大な手に反映される仕組みだ。



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