昨年末に「動的システムの情報論」という研究会に参加しました.
どの話も面白かったのですが,
とくにイカについての話が驚愕でしたので,ここにメモを書きます.
講演者は琉球大学の池田先生.
池田先生の研究室では,頭足類についての研究を行っているそうです.頭足類とは,オウムガイ,コウイカ,つついか,コウモリイカ,タコなどの,たくさん足のあるイカ・タコに代表されるものです.頭足類は無脊椎動物の中では体重に対して大きな脳を持つことから,その能力の高さについて研究が行われてきました.たとえば,タコはフタのついた入れ物をあげると,フタを開けて中のエサをとることができますし,なんと見まねまでもできるそうです.
Graziano Fiorito and Pietro Scotto, "Observational Learning in Octopus vulgaris", Science 24 April 1992:Vol. 256. no. 5056, pp. 545 - 547
また,コミュニケーション能力もあり,体に模様パターンを使ってコミュニケーションしていると言われていますが,詳細についてはまだ分かっていないそうです.
アオリイカの社会性についてのエピソードでは,群れ行動をとること(池田先生のページに写真あり),あるいは,飼っているイカにエサをあげるときに順位があるようで(シラスとサクラエビでは,サクラエビの方で特に傾向が見られるとか?),大型個体>中型個体>小型個体の順にエサを食べるそうです.さらには固定したペアを作っているとか..(なんとイカのおしどり夫婦とは!)
そんな社会性に敏感なアオリイカに鏡を見せたらどうなるか,ということを池田先生は実験されました.
すると...
アオリイカは通常はとても臆病で,モノをあげても(タコとは違って)防御姿勢をとって触行動をとることはないそうです.しかし,鏡の場合は明らかに触ってみる回数が多くなるのだとか.
極めつけのエピソードは..
1ヶ月間1匹だけ水槽に隔離されていたイカに,ある日突然鏡を与えたのだそうです.
すると,いつもは水槽の中をうろうろと動いているのが,鏡を初めて与えた日は
鏡の前でジッとしていて,次の日になって死んでしまったのだそうです!
なんとも哲学的なイカの話ではないですか!
それだけイカは「関係欲求」が強い動物なのかもしれません.
イカを使ってマークテストもしてみたのだそうです.
マークテストとは,麻酔をしている間に体に色をつけてやり,
鏡を見せて,自分の体に色がついていることがわかるかどうか,という実験です.
この実験でも,鏡にタッチした回数は色をつけたマークをつけたイカの方が,
無色の色をつけたイカよりも多かったのだとか.
以下は鏡の中の自分がわかっているのか!?
さて,同じ頭足類といっても,すべての種類が社会性を持っているわけではないそうです.
イカ類は社会性が高いですが,コウイカ類は反社会的,タコ類になると,
たこ壷好きでわかるように,非社会的なのだとか.
鏡を見せると,イカは鏡にタッチするのに対して,タコは鏡には関心がないようで,鏡の後ろに隠れてしまうそうです.ただ,同じ種類のタコでも個性があるようで,おもちゃにして遊ぶ行動を見せるタコもいるのだとか.
他にも,発達による行動の変化などについての知見のご紹介がありました.
ふーむ.
イカがこれほど繊細な性格をしていたとは,身近なようで全く知らなかったよ.
かなり異なる脳構造なのにヒトに見られるような社会性が見られるということは,行動としての社会性というのは,様々なインプリメントが可能ということか?
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