2010-10-26

[Research] 脳の説明とは?

ひさびさの投稿.

先週,岡崎の生理研で行われた
生理研研究会2010 認知神経科学の先端 「身体性の脳内メカニズム」
というワークショップに行ってきました.

平田先生の類人猿の自己認識に関する研究の発表など,おもしろい発表があったのですが,
そのあたりの紹介は要旨にゆずるとして,強烈な議論がありましたので,そこだけ報告.

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OIST の磯田先生による,
自分の行動決定に関連する他者の行動を観察したときに特異的に反応するニューロン
がサルの前頭葉の内側部に発見されたという研究発表があったのですが,
その質疑応答で,東大の池上先生が
「そんなの全然重要な問題を解決していないよ!」
と強い調子で文句をつけはじめました.そのあと,池上先生が何を言っているのか
ついていけなくなってしまったのですが,國吉先生が
「池上さんはどうしたら自己・他者のシステムを作れるのかという
 構築主義的立場からものを言っているということを理解してほしい、」
と,うまく池上先生の立場を説明されていました.
(このとき,周囲の雰囲気に流されずに,自身が違うと思ったことを主張できる自信,
 そして,それを分かりやすく伝えることができる言語能力の高さという点で,
 どちらの先生も東大の教授というのは,さすがだなぁ,とたいそう感心をいたしました.
 ショボーン.)

また池上先生のコメントに対して,別の神経生理分野の先生が「さっぱりわからん」といって
切って捨てようとされたのですが,その態度に,理研の藤井先生が
「そんな態度は恥ずかしいではないか!」
とお説教をされていたのが印象的でした.

このあたりの議論は
<吉田先生のブログ>
http://pooneil.sakura.ne.jp/archives/2010/10.php
<藤井直敬氏のブログ>
http://www.brainhackers.org/archives/2010/10/4103
に詳細に説明されていますので,ご一読を.雰囲気が分かると思いますよ.

これだけ二つの立場があからさまに対立するところを目にできたのは,
問題へのアプローチの違いをより意識的にさせてくれるし,
やっぱりそれだけじゃだめなんだ,でも自分としてどういうことを提供できるんだろうか,
自分が満足できる説明とは?と襟を正させてくれるよい機会でした.

國吉先生の発表が最後に予定されていて,周囲の方々が赤ちゃんシミュレータについてどのようなコメントをするのか
興味があったのですが,残念ながら奈良で別のセミナーがあったために発表を聞かずに岡崎を後にしました.
(奈良のセミナーはそれはそれで面白かったので,また別の機会に紹介)


neural correlate (ぶっちゃけると,意識と相関するニューロン活動が脳で見つかれば
いいじゃないかという立場?)の立場からは,メカニズムというのはなかなか分からんよなぁ
と思っていたのですが,神経生理の中であからさまに批判する人がいるというのはすごいもんだ,と思いました.
(まぁ,neural correlate だって,意識みないなふにゃふにゃしたものを科学になんとかのせましょう,
まずはここから,ということで,そういうアプローチをとったんだろうけどね)

構築主義のアプローチをとっているもののハシクレとしては,
神経生理の neural correlate 的な多くの研究に対して,どういった観点から
「説明」するモデルを提供できるかということをよく考えていかなければならない,
ということを強く意識させてくれるワークショップでした.
(と無理矢理まとめておきます)

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