「音楽好きな脳ー人はなぜ音楽に夢中になるのか」
ダニエル・J・レヴィンティン著
西田美緒子訳 白揚社
音楽に関する脳科学はほとんど知らなかったので,
それについてのまとまった情報を知ることができたという点でよかった.
著者はあらゆるジャンルの音楽に精通しており,
それらを例として音楽の認知を説明しているので,本当にわかりやすい.
紹介されている曲を iTunes でポチポチと聴きながら,もう一度読んでみたい本だ.
予測や記憶,カテゴリー化など,音楽以外で述べられる(のを目にする)
ことが多かった認知機能が,音楽を聴く時にどのように機能しているのか,
というところへの洞察もとても納得のいくものだ.
最近読んだ本の中では秀逸な本だった.
個人的に,ほぉ,と思った一節.
音声は,ただ楽器が出す異なった音というだけにとどまらない.作曲家は作曲の道具として音質を利用する.特定の楽器や楽器の組み合わせを選ぶことによって,感情を表現し,雰囲気やムードを伝えることができる.
(中略)
ラヴェルは<ボレロ>で音質を作曲の道具に用い,メインテーマを異なる音質で何度も何度も繰り返している.これは脳に損傷を受け,ピッチを聞き分けられなくなってからの作曲だった.
(第1章:「音楽とは何か」p.72)
あの曲が作曲された背景の一つに,ピッチが分からなくなる脳損傷があったというのが興味深かった.
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